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朝日歌壇

うたをよむ 嶋稟太郎

歌壇俳壇面のコラム「うたをよむ」。今回は歌人の嶋稟太郎さんが短歌における「てにをは」を取り上げ、歌全体の印象に決定的な影響を与える助詞の魅力に迫ります。

 短歌は「名詞一年、動詞三年、てにをは十年」と言われる。大辻隆弘は『短歌の「てにをは」を読む』(いりの舎)で、助詞に注目して歌を読むことで「世界の新たな見方を獲得できる」という。私も次のような歌に助詞の力を感じる。

 連結を終りし貨車はつぎつぎに伝はりてゆく連結の音

 佐藤佐太郎

 「は」の前後で歌を分解すると、①目の前にある貨車を見ながら「貨車は」と詠みはじめて、②ガチャリと「連結の音」が響いてゆく様子に注目する、というように、一首のなかの認識が視覚的な状況〈把握〉から聴覚的な〈発見〉へと動いているのがわかる。

 実際にはほとんど同時に起こ…

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